獣医さんから「あなたのペット(犬猫)は腎臓病・心臓病です」と言われたら
獣医さんから「あなたのペット(犬猫)は腎臓病・心臓病です」と言われた時のご参考になるブログにしたいと思ってます.私は現役の獣医師で,特に心臓病と腎臓病を得意分野にしています.
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腎臓内に流れ込んだ血液はどうなる?
このブログの更新を随分とさぼってしまいました:今後は通勤電車の中で少しずつ書き進めようと思っているので(私の通勤時間は約1時間40分です),どうぞお付き合い下さい.

 まず,前回の内容をおさらいしておきましょう.要点は以下の通りです.

1.腎臓はお腹の中に2つある.
2.腎臓には大量の血液が流れ込んでいる:具体的には,心臓が送り出した血液の2割を腎臓が「独り占め」している.このことは,血液中の老廃物を効率よく濾し取る(濾過する)上で効率が良い.
3.しかし,腎臓は大量の血液が流れ込むことで血液を濾過するという宿命にあるため,血液内に毒素が入り込むと,腎臓はその毒素も大量に受取り,腎臓はたちまち異常状態(機能不全)に陥るリスクが高い.腎臓に毒性を示す物質を特に腎毒性物質と呼ぶが,これにはブドウやレーズンが含まれる(但し犬のみ).
4.更に,腎臓は心臓の状態や血液の量の影響をも受けやすい.心臓病にかかったり,血圧が下がったり,あるいは全身を循環する血液の量が少なくなると,腎臓の機能は低下しやすい.

 ブログでこのような真面目で硬い内容を扱うことに,違和感のある方も大勢いらっしゃると思います.が,今の私は自分の知識をブログ以外の方法で,愛犬家・愛猫家の皆様に発信する方法がありません.このような情報八進法に好き嫌いはあるかと思いますが,「全ては犬猫の腎臓のため」と思って諦めて(?)下さい.

 さて,話しを進めましょう.

 今回は心臓から届いた血液が腎臓の中をどう流れ,どのように尿が作られるかというお話を書きます.

 こう書くと「そんなこと,一般の飼い主には関係ないよ.プロである獣医さんに任せれば良いじゃない」という批判が聞こえてきそうです.

 これまでに,このブログでも何回か書いたように,腎臓病は強敵です.

 我々獣医師が本気になっただけでは,腎臓病との戦いには勝てません.飼い主さんの深いご理解と愛情が味方につかないと,勝ち目はありません.腎臓病に勝つためには我々獣医師だけでなく,飼い主さんにも賢くなって欲しいのです.

 「賢くなって欲しい」というと,まるで飼い主さんを馬鹿にしているようにも読めますが,私の真意はそのようなことでは決してなく,「尿がどのようにして作られるか」を知らないと,「なんでこんな薬を飲むの?」,「なんでこのような検査を受けなければいけないの?」と言った疑問が氷解しないのです.

 「下痢だから下痢止めのお薬を飲ませましょう」というのと,訳が違うのです:こう書いてはなんですが,プロの獣医師でさえ多くが「腎臓(と心臓)の病気は診断も治療も難しい」と感じているのです.

 まさに強敵ではありませんか!!!!!!!!!!!!!!!!!

 それから,これは獣医師として実は書きにくいことですが,皆さんが正しい知識を身につければ,「宝物(ペットのことです)の腎臓を守れる獣医師と守る資格のない獣医師」を見分けることも可能になるのです.

 だから勉強しましょう!!!!!!!!!!!!

 お話を元に戻しましょう(話しが脱線するのは,私の悪いクセであることを思い出していただけましたか?).

 お腹の中を通る太い動脈(腹大動脈と言います)から太い血管が枝分かれして腎臓に入り込みます.腹大動脈から腎臓に血液を送るこの太い血管を腎動脈と呼びます.

 ちなみに,動脈は心臓から血液を全身の臓器に送る血管の総称で,生きている動物の動脈はピクピクと動いているので日本語では「動脈」と言います.これに対して,全身の臓器から心臓に血液を戻すための血管を静脈と言いますが,これはピクピクと動きません.静かなので「静脈」と呼びます.昔の人はこの2つの血管に解りやすい名前を与たえと思いますが,皆さんはどう思いますか?

 もうちょっと脱線させて下さい:床屋さんの看板と言えば,赤と青と白の帯がくるくる回っている「アレ」を連想しますね.あの看板(アルヘイ棒と呼ぶらしいです),赤は動脈,青は静脈,白は包帯を示しているという説が有力ですね:http://www.riyo.or.jp/library/etc_rekisi_01_10.html
 実際に,動脈には酸素をたっぷり含んだ血液が,静脈は酸素に乏しい血液が流れています.ですから,動脈を流れる血液は本当に赤く見えますし,静脈を流れるそれは青っぽく見えます.ちなみに,昔は床屋さんが色々な病気の治療もしていたようです.

 話しを元に戻しましょう.

 腎臓の内部はどのような構造になっているのかを,猫の腎臓の写真で確認しましょう(この猫はある病気に罹り,飼い主さんのご了解を得て解剖させて頂いて撮影したものです.この腎臓の「持ち主」だったランちゃんのご冥福をお祈りします).
腎臓断面写真

 腎臓はよく「そら豆型」と言われます.確かに似てますね.

 その内部を見ると,外側がアメ色,そしてその内側は薄い黄色(またはクリーム色)になっていますね.

 このアメ色の部分を皮質(ひひつ),黄色の部分を髄質(ずいしつ)と呼びます:この「皮質」とか「髄質」という名称は,今後のこのブログの中で何回も出てきますので,頭の片隅に入れておいて下さい.

 パソコンで書いたイラストですが,皮質・髄質を今度は何百倍にも大きく拡大して見てみましょう.すると,以下のような構造が腎臓内にびっしりと詰まっています.

 ネフロン

 本によって数はまちまちですが,このような構造が犬猫の腎臓には数十万個あると言われています.

 血液の流れに沿ってこの構造を説明しましょう:これが今回の「本題」です.

 心臓から送り出された血液は腹大動脈と腎動脈を経て腎臓内に入ります.そして,腎臓内で何回も何回も枝分かれするうちにだんだんと細くなり,最後に輸入細動脈(ゆにゅうさいどうみゃく)という血管になります.

 この血管は顕微鏡で何百倍にも拡大しないと,見ることはできません.

 輸入細動脈はボーマン嚢(のう)という「袋」(医学用語ではたびたび「袋」のことを「嚢」と表記します.有名なのが肝臓にくっついている胆嚢(たんのう)という「袋」です)に入ると,更に無数に枝分かれして糸球体となります.

 こんがらがった糸が玉のようになっているので,糸球体と名付けられたのでしょうね.そして,糸球体を流れた血液は1本の輸出細動脈(ゆしゅつさいどうみゃく)となってボーマン嚢を去ります.糸球体に血液を送り込むのが輸入細動脈,そして送り出すのが輸出細動脈という訳です.

 ここはもの凄く重要ですから,よく覚えておいて下さい.

 今後,この私のブログで何回も出てくることになりますが,この糸球体で血液が濾(ろ)過され,その濾過液をボーマン嚢が受け取るところから,尿の生成が始まるのです.これは人間も同じことです.

 もし,この糸球体・ボーマン嚢間で血液の濾過が急激に停止してしまったら,どうなるでしょうか?

 おっと,先走りすぎましたね:これは次回以降で説明しますが,でも想像してみて下さい.

 次に,ボーマン嚢に目を移しましょう.

 ボーマン嚢には1本の管が接続していますね.この管はぐにゃぐにゃ曲っていますね.これを尿細管(にょうさいかん)と呼びます.そして,この尿細管には輸出細動脈から出発した血管が巻き付いていますね.そして,何本かの尿細管が合流して集合した管を集合管と呼びます.

 今回は(も)かなり専門的な話しを書いたことは承知しています.一度に沢山書くと消化不良を起こすかも知れませんから,今回はここまでにしましょう.

 次回は人間を含む健康な動物がいかにして尿を作っているかを具体的に説明します.

 余談ですが,「管理人(つまり私)にしか読めないコメント」として,様々な書き込みをして下さって有り難うございました.その中に,「あなたはどんな方なんですか?」みたいな質問が含まれています.

 これに対して,私は明確にお答えしませんでした.が,もし宜しければmixiで「八海山万歳」というニックネームを検索してみて下さい.私が見つかります.私はmixiで平日はほぼ確実に日記を綴っているので,私がどんな人なのかが直ぐに解ります.私は一言で言えば,怠け者で,飲兵衛で,中年のおっさんで,でも動物の腎臓病と心臓病を憎むことにかけては誰にも負けたくない獣医師の一人です.
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腎臓(じんぞう)ってなんだ!?
 心臓病と腎臓病のどちらを先に解説するか,ちょっと悩みましたが,腎臓病を先に扱うことにしました.その理由は,ちょうど今の時期,腎臓病が悪化してしまう動物が多いからです(この理由はいずれキチンと説明しますね).

 今までと違って,これからは私が講義や講演会で使っているスライド画像なども織り交ぜながらお話しを進めようと思っています.

 腎臓(じんぞう)という言葉を聞いて,皆さんは最初に何を連想しますか?

 お酒が好きな私は,腎臓というと直ぐに「マメ」という言葉を思い出します.「マメ」というのは,関東地方のモツ焼き屋さんでは「腎臓」のことです.塩焼きにして食べると美味しいんですよ.

 ところで,腎臓のことを「マメ」というと,なんだか「小さくて,大したことがない臓器」というイメージを持つかも知れませんが,そんなことはありません.

 我々人間を含め,動物の体内には偉大で,働き者の臓器が沢山ありますが,腎臓はそんな臓器の一つなのです.

 腎臓の偉大さをご理解頂くために,まずは腎臓の構造を知ることにしましょう.

 最初に,この写真をご覧下さい.これは猫のお腹の撮影したレントゲン写真です.
猫の腹部レントゲン写真(側面像)


 レントゲン写真だからと言って,「私には判らない」と尻込みしないで下さい.実は理屈はとても簡単なのです.

 大まかに言うと,レントゲン写真では,白く写るものと黒く写るものがあります.

 骨のような硬いもの(骨以外に,コインや金属があります),それから水はレントゲンでは白く写ります.
 空気,筋肉,脂肪などは黒く写ります.

 これは,今後のこのブログ中で重要なことになるので,是非頭に入れておいてください(同時に,私は飼い主としてこれぐらいのことを知っておいて欲しいと思っています)

 …話が脱線するのは,私の治らない病気だと思って下さいね.でも,この病気はそれほどひどくないようです.なぜなら,私はキチンと話を元に戻せるからです!!

 これは,猫のお腹を横から見た写真ですが,これでは腎臓がどこにあるかなんて判りませんね.

 矢印で囲んだこの部分が腎臓です.うっすらと白い卵みたいな影が見えますね.横から見ると,右と左の腎臓が重なって写ります.でも,よく見ると,卵形の影が2つ重なっているのが解るはずです.

猫の腹部レントゲン写真(側面像:腎臓)

 
 腎臓の影は,一番後ろの肋骨のあたりの背中側にあります.腎臓はお腹の中にある臓器ですが,さらに詳しく言えば,お腹の中でも前(頭)の側にある臓器です.

 今度は,猫のお腹をお腹側から撮影したレントゲン写真をお見せしましょう.

猫の腹部レントゲン写真(背腹像)



 矢印で囲んだ部分が腎臓です.私たち人間と同様,動物の腎臓も左右2つあることが判ります.大まかには,腎臓は一番後ろの肋骨の背中側にあります.

猫の腹部レントゲン写真(背腹像:腎臓)



 ここでまた話を脱線させます.
 腎臓に結石ができたり,炎症を起こすと,動物は腎臓に痛みを感じるようになります. もし,皆さんのペットがこの場所を触ると嫌がるようであれば,ある種の腎臓病の疑いがあります.直ぐに動物病院に行って尿の検査を受けることを強くお勧めします.

 さて,話を元に戻します.
 腎臓は血管が豊富で,大量の血液が流れ込んでいます.腎臓は血液という液体を豊富に含む臓器なので,白っぽく見えます.実際にレントゲン写真では矢印で囲んだ腎臓が白っぽく見えますね.

 ここで,不思議に思いませんか?
 なぜ,腎臓は大量の血液を含んでいるのでしょう??

 猫にはとても迷惑な話ですが,今度は実物の腎臓を見てみましょう.

 腎臓外貌


 この写真が猫の腎臓です(とある手術中にこの写真を撮りました.モデルになってくれた,ミーちゃんに感謝しましょう).

 写真の中央に見える卵形の臓器が腎臓です(2つある腎臓のうち,写真には左側の腎臓1つしか写っていません).

 この腎臓には,どす黒い色をした管が上からつながっていますが,これは血管です.心臓から大動脈という非常に太い血管が出ていて,これが胸の中,そしてお腹の中を通り,腎臓のあたりで枝分かれして,腎臓に流れ込んでいます.専門的には,この腎臓に流れ込む血管を腎動脈と言います.非常に太い血管ですね.

 腎臓に流れ込む血管が非常に太いということは,腎臓に大量の血液を送り込んでいるという良い証拠です.だから,レントゲン写真では腎臓は白く写る訳です.

 下のイラストをご覧下さい.

心拍出量と腎血流量


 体重が10kgの健康な犬の心臓は,1分間に全身に約1リットルの血液を送り出しています.ちなみに,我々人間では約5リットルと言われています.
 心臓が送り出した血液は,脳にも皮膚にも脂肪にも腸にも筋肉にも,とにかくありとあらゆる臓器に配られます.
 ところが,血液は全ての臓器に平等に配られる訳ではありません.脳に配られる血液は5%以下と言われています.が,なんと腎臓には約20%の血液が供給されています.これって,不公平ですよね? 動物の血液供給には民主主義はあり得ないようです.

 腎臓は,血液を濾過し,体内で不要になった老廃物をこし取り,尿を作る臓器です.腎臓に言わせれば,血液は尿の原料のようなものです.ですから,腎臓に常時大量の血液が流れ込んでくれないと,腎臓は尿を作ることができません.ですから,腎臓は脳よりも大量の血液を受け取らなければならない訳です

 この事実から,大切なことをいくつか学び取って頂きたいと思います.

 まず,腎臓の働きは心臓の機能に大きく影響されるということです.
 腎臓は,心臓というポンプが汲み出した血液を受け取ることで,はじめて尿を作ることができます.ですから,心臓の機能や血圧が正常でないと,腎臓が受け取る血液の量に支障が出てきます.「腎臓病」というと,「腎臓そのものの病気」と思いがちですが,実は,腎臓自体は正常でも,心臓に問題があれば,腎臓の機能は低下する恐れがあるのです.

 次に,腎臓は常時,大量の血液と接触しているということです.
 血液に毒素が入り込むと,この毒素は全身を巡るわけですが,特に腎臓が毒素のダメージを受けやすいということです.

 いくつか具体例をお示ししましょう.
 我々人間がよくかかる病気の一つに糖尿病があります.血糖値が上昇することで,全身に色々な問題を引き起こす厄介な病気ですね.この糖尿病は,人間ほど発生率は高くありませんが,犬や猫も襲います.適正な治療を受けないと,糖尿病の犬や猫は,腎不全になって死亡します.実を言うと,糖尿病の人間も最後は腎不全が原因で亡くなる方が少なくないのです.

 糖尿病になって,血糖値が上がると,なぜ腎臓が悪くなるのでしょうか?

 それは,血液中に糖(正確にはぶどう糖とかグルコースと呼びます)が大量に存在すると,それは血管にとっては猛毒になるからです.血糖値が高い状態が長く続くと,腎臓の血管も目の網膜(視覚を司る大切な膜で,目の奥にあります)の血管も,そして脳の血管も全部痛んでしまうのです.

 もう一つ,触れておきたいのはブドウです.

 一昨年あたりから,アメリカでブドウやレーズンを摂取した犬が,その直後に突然,体調を崩し死亡するという事例が相次いで報告されました.直接的な死因は,急性腎不全でした.血液透析まで受けたにも関わらず,死亡した例も報告されています.
 このような事例は犬でのみ報告されていて,猫や他の動物では報告がありません.ブドウに含まれる何らかの物質が血液に入り込み,犬の腎臓を痛めつけていると言うところまでは判っていますが,具体的にブドウに含まれる何という物質が真犯人かまでは判っていません.
 過去の報告をまとめると,急性腎不全を発病する最低摂取量はぶどうであれば19.85g/kg,レーズンとして3.11g/kgと言われています(単位に気をつけて下さい.これは動物の体重1キロあたりの摂取量をグラムで表示しています.3キロのイヌであれば,約60gのブドウで腎不全になる可能性が高いということです.
 この話を幾人かの方にしてきましたが,時おり「では,何グラムまでなら安全なのか?」と質問されることがあります.

 基本的に,イヌではブドウが有毒なことが最近になって解りました.そして,過去の発病例を見ると,最も摂取量が少ないイヌで,体重1キロあたり約20gのぶどうだということが解りました.もしかしたら,これよりも少ない摂取量で死亡するイヌもいるかも知れません.ですから,イヌにはブドウを決して与えないで頂きたいのです.何グラムまでだったら安全なのかというデータはありません(実験で確認するためには,多くの犬に犠牲を強いるため,私はこのような実験は人道的に問題があると思います).

 このように申し上げているのに,「では,何グラムまでは大丈夫なのか?」と質問される方の心境が解りません.
 犬はぶどうやレーズンを食べなくても,健康を維持できます.ぶどうを食べなくても全く問題ないのです.それなのに,なぜぶどうやレーズンを与え続けようとするのでしょうか? 私にはよく理解できません.

 話がまた脱線してしまいましたが,次回は腎臓に流れ込んだ血液がどうなって行くか,腎臓の構造と関連づけながら説明を進めたいと思います.
良い獣医さんの見つけ方(その2)
 いくら優秀な獣医師の診察を受けても,飼い主さんがいい加減では満足な診察は成立しない,ということを今回は強調したいと思います.

 私の父は,私が大学院生の時に食道癌で亡くなりました.

 当時の私は獣医学の,しかも内科の,更に心臓の勉強ばかりしてましたから,人間,しかも実父が食道癌になって,はじめて食道癌のことを真剣に調べ,勉強しました.なぜなら,父には少しでも長く生きて欲しい,生きるにしても少しでも苦しまずに生きて欲しいと思ったからです.
 自分の研究は「そっちのけ」状態で,とても苦手なドイツ語の論文まで読みました.
 大切に思う家族(今日日,これにはペットも含まれますね)が大病を得たら,やはり家族が本気にならないと,よい治療は受けられないし,亡くなった後も後悔が残るのではないでしょうか?

 無論,私は父の担当医を心の底から信じていました.しかし,全てを「医者任せ」にして良い場合と,悪い場合があると思うのです.少なくとも,命に重大な影響を及ぼす病気については,私は医者に全てを任せてしまうのは良くないことだと思います.飼い主さんにもその病気のことをよく知って頂ければ,生活面で改善できることが増えますし,そうすれば動物の病気にもプラスになります.それに,もっと言ってしまえば,飼い主さんにかしこくなって頂ければ,それで良い動物病院が見つかるチャンスが増えることにもつながると思うのです.

 ガンだけでなく,腎臓病も心臓病も非常に手強い相手です.
 担当の獣医師に任せているだけでは,勝てる訳がありません.

 ちょっと不謹慎な例で話を続けます.

 私は車に乗ってよく出かけます.埼玉県北部の田舎に住んでいるので,仕方ないことなのですが,私は車の運転があまり好きではありません.車にあまり興味がないからです.

 そんな私でも,車を購入する時は,
 燃費はどのくらい?
 女房も運転しやすいと思うか?
 どのぐらい乗れるか?
 ローンはどうする?
 保険は?
 子ども達がいずれ乗るようになったら…云々

 とかなり遠い先のことを考えて検討します.これは常識ですよね?

 ペットはどうでしょう?
 
 ペットショップで気に入ったから,可愛いと思ったから,子どもにせがまれたから…
 そんな軽い理由(失礼でしたらお詫びします)で,動物を飼い始め,その動物がやがて腎臓病・心臓病・がんと言った,人間で言う成人病を患った時には,「なんで動物病院の診察にはこんなに金がかかるんだ!!」と思う方がいらっしゃるかも知れません.

 ですが,我が国ではペットに医療保険はありませんし(最近はだいぶ民間企業によるペット保険が普及してきましたね),やはり心臓・腎臓という大切な臓器の病気を診察・治療するためには,どうしてもそれなりの費用はかかってしまいます.この点はぜひ皆様にご理解頂きたい大切な点です.

 私は「ペットを飼う時に,ペットが歳をとって重たい病気に罹った時に,それなりのお金がかかることを覚悟しろ」と言っているのではありません.

 「お金がかかることは仕方ない」と納得して,良い治療を受けて頂きたいのです.

 こう書くと,多くの方からいくつかのご意見・ご質問が出ることを私は承知しています.

 第一に,重たい病気に罹って,飼い主が治療費を負担できないのなら,辛いけど安楽死を選ぶというご意見です.

 冒頭で心臓病や腎臓病の診療に長けた獣医師のチェック・ポイントをお示ししましたが,ついでに「最悪の獣医(存在するとは思いたくないのですが)」のチェック・ポイントを一つお示ししましょう.

 それは,飼い主の要求に応じて,即座に安楽死を実施する獣医(あえて獣医師とは書きません.その理由はいずれ書きますね)です.

 治療費に制限があるのなら,動物病院でそう仰って下さい.
 具体的に,月々いくらまでしか支払えないと,仰って良いのです.

 第二に,「お金がかかるのは仕方ないが,できることならお金をかけずに病院で治療を受ける方法はないのか?」というご質問です.

 例えば,ここに2頭のイヌがいて,両方とも腎臓病に罹ってしまったとします.

 片方(仮に大和としましょう)は非常に軽い腎臓病です.
 腎臓病はひどくなると,尿毒症症状と言って頑固な下痢や嘔吐,食欲不振,貧血,体重低下などが見られるのですが,大和は病気が非常に軽いため,見た目には全く腎臓病に見えない段階だとします.
 食事療法とちょっとした薬を飲み,そして定期健診を受ければ,少なくとも2年は良い状態で(つまり,尿毒症症状に苦しまずに)生きられるハズだと担当の獣医師は太鼓判を押しています.

 一方,もう1頭(仮にモモとしましょう)は,重たい腎臓病です.
 尿毒症症状が続いていて,誰の目から見てもモモの状態は良くありません.
 獣医師は最善の治療を実施しても,延命は期待できず,尿毒症症状を少しでも緩和してあげることしかできないと言っています.また,獣医師はざっと見積もって「ももはあと,3ヶ月持つか持たないか」とも言っています.
 人間で言うと,血液透析や腎臓移植に踏み切らなければならないほどひどい状態だということです.

 さて,これから治療を開始して2頭が亡くなるまでの治療費を比べてみましょう.

 常識的には,治療期間が長い大和の方が高いと考えられますね.
 しかし,現実には,短期間と言えどもモモには何種類もの薬が必要で,更に色々な検査を何回もしなければならないので,一概に「大和の方が高い」とは言えないのです.

 動物では調査されていませんが,アメリカで興味深いデータが出ています.

 腎臓病は人間でも患者さんが多く,血液透析をしなければならないほどひどい腎臓病の方がどんどん増えているそうです.

 血液透析が必要なほどひどくなるまで治療を受けなかった患者が,「さぁ,これから死ぬまで血液透析を受ける」ということで,亡くなるまで透析を受けた場合(つまり,モモと同じパターンです),膨大な医療費がかかります.

 反対に,非常に軽い腎臓病の段階から治療を受けると(つまり,大和と同じですね),治療期間は長くなりますが,トータルで見ると医療費は安価になることが判っています.

 最後に,「良い治療が受けられる病院をどうやって見つけるんだ? 同じお金をかけるなら,よい治療を受けたい.だが,その病院をどうやって見るけるんだ?」という問題もありますね.

 前回は前もって,「良い獣医さんの見分け方を書く」というような予告をしながら,あまりハッキリしたことは書きませんでした.

 いや,正確に言うと書けなかったのです.

 その理由は,獣医師の診療範囲は非常に幅広く,様々な能力を要求されるからです.この幅広い能力をちょっとしたチェック・ポイントで見透かすことは不可能だと思うからです.ちょうど,良い人間と悪い人間を見分けるための,簡単なチェック・ポイントなど存在しないとの同じなのかもしれません.

 ですが,このブロクのメイン・テーマである,腎臓病や心臓病の診察に限定すれば,私はちょっとしたチェック・ポイントで良い獣医さんを見つけられると思います.

 まず,腎臓病の診療に長けた先生は;
 1.血液検査と同じかそれ以上に,尿を詳しく検査しようとします
 2.血液検査だけで慢性腎臓病とは診断しません
 3.食事療法の重要性を具体的に説明します
 4.食事以外の生活指導も,季節に応じて丁寧にします
 5.最低でも半年に1回ぐらいは血圧を測ります
 6.診察の都度にお腹を触り,皮膚をつまんだり,口の中や目をチェックします
 7.同じように,診察の都度に飼い主さんに「飲み水の量が増えていないか」,「おしっこの量や回数が増えてないか」を質問します

 それから,心臓病の診察に長けた先生は:
 1.診察の都度に,必ず動物に聴診器をあて,心臓と肺の音をキチンとチェックします
 2.同じく診察の都度に,後ろ足の内側(股の付け根の部分)を触ります
 3.カルテに心臓の雑音の様子や脈拍数を記入します
 4.食事療法の重要性を具体的に説明します(これは腎臓病と同じですね)
 5.食事以外の生活指導も,季節に応じて丁寧にします(これもそうですね)
 6.散歩の時間や仕方についてもアドバイスします
 7.むやみに利尿剤やステロイド剤を処方しません
 8.飲み水の量を制限する(つまり少なくする)よう飼い主さんに指示することは絶対にありません
 9.心臓病がひどくなって,利尿剤を服用せざるを得ない場合には,日頃から十分に水が飲めるよう飼い主さんを指導します

 腎臓病に関しては7つ,心臓病については9つのチェック・ポイントを示しました.
 もし,皆さんが心臓病または腎臓病のペットを飼ってらしていて,ホームドクターがこのポイントの全てに該当するのなら,それは相当優秀な獣医師であり,「どうぞ安心して小さな命を預けて下さい」と私は断言します.

 一つ付け加えますが,上記の点をチェックすれば,なぜ心臓病や腎臓病の診察に長けた獣医さんかどうか判るかは,またいずれゆっくりと説明することにします(そうでないと,話の収拾がつかなくなるので).

 総論的な話はこれくらいにして,次回から本格的に腎臓病の話に入りましょう.

 今までにコメントが一つもつかないので,ちょっと寂しくなってきました...
イヌやネコが腎臓病や心臓病に罹るようになったのは,つい最近のこと
 本題である病気の話になかなか入らず,申し訳ありません.

 今回は話があちこちに脱線する(これは私の治らないクセだと思って諦めてください)と思いますが,どうぞお付き合い下さい.

 このブログでお話ししようと思っている腎臓病や心臓病(ガンも含まれます)は,「動物が長生きするようになったからこそ増えてしまった病気」という側面があります.

 私は歴史の本を読むのが好きですが,特に昭和に興味があります.昭和という時代は,太平洋戦争の前後でまるで全く違う時代に思えるし,私の両親や私が生まれた時代でもあるからです.

 私たち日本人がペットとしてイヌやネコを飼うようになって,どのくらいの年月が経ったでしょうか?

 おそらく,太平洋戦争が正式に始まる以前は,多少は豊かだったかも知れませんが,ペットはあまり一般的でなかったと思います.
 せいぜい番犬程度で,伝染病の予防法もなく,短命だったと思います.
 ネコが食べるのはキャットフードではなく,ネズミだったと思います(実際に,私が子どもだった頃,ネコが得意げな顔をしてネズミを加えて歩いているのをよく見かけました.最近はこんなことはなくなりましたね).

 戦争が終わり,日本から食品を含む全ての物資がなくなり,日本人は自分自身のその日の生活に追われ,とてもペットを飼う経済的なゆとりも,精神的な余裕もなかったと思います.

 やがて朝鮮半島で戦争が始まると,朝鮮特需とも言われるほどの好景気を日本は迎えます.この時になって,やっと日本人の心身に余裕が出てきたと指摘する方(本)が多いですね.そして,私が生まれる頃,池田首相の「所得倍増計画」が実行に移され,みるみる間に目標が達成され,本当に日本は好景気になります.

 詳しく資料を分析してこのブログを書いているわけでないので,多少,数字に間違いがあるかも知れませんが,日本にドッグフードが入ってきたのはこの頃です.

 私の知り合いに,日本ではじめてとなるドッグフードの輸入・販売に奔走した方がいらっしゃいますが,ドッグフードに対する当時の日本人の反応は極めて冷たかったそうです.

 イヌの餌をわざわざ金を出して買うのか?
 イヌは残飯(人間の食べ残し)で十分

 こんな意見が非常に多かったそうです.

 しかし,昭和40年代の半ばになって,やっとドッグフードの販売数が軌道に乗ったそうです.

 動物が長生きするためには,まず食べ物が重要です.そして,伝染病から身を守るための予防注射も大切です.

 狂犬病以外の伝染病の予防接種がいつから始まり,接種率がどう上昇したのかは調べられませんでしたが,おそらく予防注射は昭和50年代にはいって広く普及したと想像しています.

 つまり,栄養と予防注射という長生きするために最低限必要なアイテムが普及したのは,昭和50年前後ということです.これ以前の動物は,栄養不良や伝染病のために今よりもずっと短命だったと断言できます.

 前置きが長くなりましたが,私が今回,最初に強調したいことは,「少なくとも日本では,イヌやネコが長生きするようになってから,せいぜい20年チョットしか経ってない」ということです.

 つまり,イヌやネコが心臓病・腎臓病・がんと言った病気に罹るようになったのは,20年ぐらい前からということです.

 これが何を示しているかというと,30年前までの獣医師は,このような病気を扱わなかったし(扱う必要がなかった・出会えなかったとも言えますね),そもそもこのような病気はこの世に存在しなかった訳ですから,教科書にすら載っていないという状況だった訳です.

 話題を変えましょう.

 太平洋戦争が終結するまで,日本の獣医学教育は専門学校で2年間行われていました.しかし,あのGHQが「それではダメだ」と判断し,4年制に変更され教育は大学で行われるようになりました.さらに,獣医師に対するニーズが多種多様となり,これを受けて6年制に延長されました.私はこれは誠に正しい措置だと思っています.

 私は6年制教育が始まった4期生です.この当時,私は先進的な獣医学教育を受け,獣医師になったはずです.しかし,そんな私達の世代でさえ,猫の病気はほとんど講義に出てきませんでした.
 私は心臓病が主な専門ですが,私は学生時代,イヌの心臓病としてはフィラリア症しか講義を受けなかった記憶があります.「猫には心臓病はほとんどない」とも教えられました.当時は確かに心臓病にかかる猫は本当に珍しかったのです.

 しかし,今はどうでしょう.

 「猫には心臓病はない」と思っている獣医師は皆無です.この20数年間で猫が長生きするようになり,学問が進歩し,そして獣医師の診療レベルがアップして,猫にも心臓病が発生していることが判明しました.
 
 ここまでお話しすると勘の良い方はお気づきだと思うのですが,学生時代に大学で教わった知識や技術だけでは,動物の病気を診断・治療することができないのです.

 獣医師は定期的に学会や講習会に出かけ,あるいは仲間内で勉強会を作り,新しい情報や技術を仕入れ,そして新しい学術書や文献を読みふけり,必死に勉強しています.その理由は,「動物を苦痛から救い,飼い主さんに満足して頂きたい」と思っているからなのですが,かつて以上に動物が長命になり,今まで存在しなかった病気が発生するようになったこと,そして,様々な動物がペットとして飼育されるようになり,かつての知識では十分に診療できないという実情もあります.

 ですから,私は獣医師たるものは一生涯,勉強に追われる,いや追われるべきだと信じています.

 勉強している獣医師は,自分に対しても他人に対しても謙虚です:飼い主さんや別な病院を罵倒・批判することはありません.
 勉強している獣医師は,難しい話を解りやすくかみ砕いて説明できます:説明できないにしても,必至にかみ砕こうと努力しています.無論,飼い主さんが発する質問には丁寧に答えるはずです.
 勉強している獣医師は,志が「動物を苦痛から救い,飼い主さんに満足して頂くこと」にあります:動物や飼い主さんに不快感を与えないための努力をしています.

 もしご覧の皆様が,人間観察に自信をお持ちなら,以上の点を観察してみるととても参考になると思います.
 このような自信をお持ちでない方の中には,ネットで病院の情報を集め判断する方がいらっしゃいます.

 が,注意してください.

 ネットで誰が発信したのか解らない情報(こう言うのを怪情報と呼びます)に振り回されて,あちこちの病院を転々と渡り歩き,その挙げ句に病気がどんどん悪くなってしまった…という笑えない話は,実はよくある現実なのです.
 その病院に通っている他の飼い主さんから直接,お話しを伺っても良いし,ご自分で一度,その病院に立ち寄って,直接病院の雰囲気を感じ取ると良いと思います.決して,ネットの情報に翻弄されて不幸にならないで頂きたいものです.

 「なんだ,良い獣医さんをみつけるためのチェック・ポイントを書くのかと思った」と落胆されている方がいらっしゃったら,その方に私は次のように質問します.

 「良い結婚相手を見つけるためのチェック・ポイントは何ですか?」と.

 こう聞かれて,「健康で,明るくて,真面目で,年齢は…」となるのでしょうが,どれも表面的なことばかりですよね.該当する方は何万人もいます.

 結婚や恋愛と全く同じで,いくつかのチェック・ポイントを満たせばよい先生などという判断は不可能なのです.

 まずは直接あって,色々と話をする.
 その中で,その先生の人間性や技量が必ず見えるはずです.

 最後は,ちょっと飼い主さんにとって耳の痛いことを書いてしまったかも知れませんね.

 でも,大学病院で診察している獣医師として,一つだけチェック・ポイントをお示ししましょう.

 それは
 ・解らないこと,出来ないことを正直に飼い主さんに伝え,決して嘘をついたり,無理な処置をしない
 ・解らない・出来ないと言うだけでなく,解らない・出来ないから,「こうしましょう」と次の方針をキチンと提案する
 の2点です.

 この2つを実行している先生は,私はホームドクターとして優秀だと思います.

 1つ目の点については,飼い主さんにもっと賢くなって欲しいということです(このことは次回お話ししたいと思います).

 2つ目の点は,例えば「この子の心臓から小さな雑音が出ているように思います.しかし,本当に雑音が出ているかどうか私には正確に判断できません.そこで,心臓病の診療を得意とする先生(大学病院とは限りません)をご紹介したいのですが,いかがでしょうか?」と言ったような対応をされる先生ということです.

 次回は,獣医師として飼い主さんにお願いしたいことを書きたいと思います.
犬と猫の3大死因の共通点
 それぞれの病気の詳しい説明に入る前に,もうちょっと全般的な説明を続けます.

 心臓病,腎臓病,そしてがんはそれぞれ異なる病気です.しかし,いくつかの共通点があります.

 第1に,いずれも慢性疾患だということです.

 「疾患」というのは「病気」と同じ意味ですね.
 「慢性」というのは,「長い時間をかけてゆっくりと進行する性質がある」という意味です.しかし,皆様にはもう一つの重要な意味を知って頂きたいと思います.

 病名に「慢性」の二文字がつく病気は,完治しないのが基本です(がんの中には完治するものがありますが,再発したり転移するタイプもまた多いのが実情です).
 例えば,犬や猫はたびたび膀胱炎という病気にかかります.この病気が短時間で進行すれば私達は急性膀胱炎と診断します.急性の病気は完治が望める病気です.ですから,治療の目標は病気を完治させることです.

 これに対して,慢性膀胱炎は完全な治癒(完治)は望めません.そのため,症状の緩和や病気がそれ以上悪くならないようにすることが治療の目的になります.つまり,心臓病,腎臓病.がんに罹った犬や猫は,その病気と長い間,戦うことになります.

  「長い間,戦うことになります」….言葉で言うのは簡単です.長い間,動物病院に通えばそれなりの費用もかかります.しかし,治療が成功すれば病気の進行は遅くなり,動物は苦痛から解放されます.動物が苦しまなければ,飼い主さんも明るい気持ちを取り戻すことが出来ます.いずれにしても,長い治療期間を通じて,飼い主さん達はたとえ担当の獣医師から様々な説明を受けたとしても,色んな疑問がわいたり,様々なことに不安感を感じられるのが普通です.そんな疑問点を網羅して,できるだけ判りやすくお答えしようと言うのがこのブログの目的です.

 「長い間,ペットの病気と戦う」…この戦いに疲れ果ててしまう方がいらっしゃるかも知れません.その挙げ句に「もうペットは飼わない」と仰る方がいらっしゃるかも知れません.私もこのようなことを何回となく飼い主さんから言われたことがあります.
 私は,動物をどうしても好きになれない人間がいることを知っています.同時に,動物と暮らすことで幸せになる人間がいることも知っています.私のような動物医療に携わる獣医師がサポートできるのは,主に後者の方々です.

 「もうペットは飼わない」と言われてしまうと,私は何とも言えない気持ちになります.ですから,そのような飼い主さんをお一人でも少なくしたいと思ってます.

 この3つの疾患の第2の共通点は,治療する上で生活管理が非常に重要だということです.

 私は大学の附属病院で診察しているため,急性の病気よりも慢性の病気にかかった動物を多く拝見しています.
 飼い主さんに病名を告げ,今後の見通しや生活指導をご説明し,最後に「何かご質問はございますか?」とお聞きすると,多くの飼い主さんが「日常生活で気をつける点を教えて下さい」とか,あるいは「食べ物や散歩にはどのような点を注意したら良いですか」とお尋ねになります.これはどちらも非常に的確なご質問です.

 いずれ詳しく説明しますが,例えば慢性心臓病に罹った犬や猫では,食事に十分に注意する必要があります.特に塩分(正確にはナトリウム)は要注意です.また,栄養価の高いものばかり食べて肥満になるのも要注意です.
 慢性腎臓病に罹ってしまった場合,日頃から水を沢山飲めるようにしてあげるべきです.食事(敢えて“餌”とは書きません.この理由はいずれ言及します)に関しては,蛋白質を制限します.
 炭水化物はがんを転移させやすくすることが判っているため,がんに罹った動物はできるだけ炭水化物を食べないようにすべきです.

 食物は決して薬ではありません.

 しかし,慢性的な病気では,成分を病気に応じて変えた食物は,薬と同じかそれ以上に有効なことが犬や猫でも判っているのです.このことも,いずれ具体的に説明する予定です.

 第3の共通点は,既に述べたことですが,病状はゆっくりと進行(つまり悪化)するということです.
 治療を受けた場合よりも,治療を受けた方が病状の進行は無論,遅くなります.しかし,治療を受けたとしても,病気の進行を完全にストップさせることは多くの場合で不可能です.どうしても,進行してしまうのです.

 このことは,慢性疾患では通院期間が長くなることを示します.

 通院期間が長くなると言うことは,それだけお金も労力かかります.普通,お金も労力もかかる場合,十分に納得してから判断したいですよね?

 しかし,私から見ると日本人は特にお金の話題を避けるクセ(これは良いことでもあるのでしょうが)があるようです.

 でも,動物の命も大切ですが,お金も大切ですよね.

 十分に納得して治療を受けて頂くために,病状は当然のこととして,治療費についてもよく説明を受ける権利が飼い主さんにあると言うことです.

 良い獣医さんの見つけ方にはいくつかポイントがあると思います.その一つが「治療費について,気軽に相談・質問できる先生」だと思います.話が脱線しますが,次回は良い獣医さんの見つけ方,そして飼い主さんにお願いしたいことを書く予定です.
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