獣医さんから「あなたのペット(犬猫)は腎臓病・心臓病です」と言われたら
獣医さんから「あなたのペット(犬猫)は腎臓病・心臓病です」と言われた時のご参考になるブログにしたいと思ってます.私は現役の獣医師で,特に心臓病と腎臓病を得意分野にしています.
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良い獣医さんの見つけ方(その2)
 いくら優秀な獣医師の診察を受けても,飼い主さんがいい加減では満足な診察は成立しない,ということを今回は強調したいと思います.

 私の父は,私が大学院生の時に食道癌で亡くなりました.

 当時の私は獣医学の,しかも内科の,更に心臓の勉強ばかりしてましたから,人間,しかも実父が食道癌になって,はじめて食道癌のことを真剣に調べ,勉強しました.なぜなら,父には少しでも長く生きて欲しい,生きるにしても少しでも苦しまずに生きて欲しいと思ったからです.
 自分の研究は「そっちのけ」状態で,とても苦手なドイツ語の論文まで読みました.
 大切に思う家族(今日日,これにはペットも含まれますね)が大病を得たら,やはり家族が本気にならないと,よい治療は受けられないし,亡くなった後も後悔が残るのではないでしょうか?

 無論,私は父の担当医を心の底から信じていました.しかし,全てを「医者任せ」にして良い場合と,悪い場合があると思うのです.少なくとも,命に重大な影響を及ぼす病気については,私は医者に全てを任せてしまうのは良くないことだと思います.飼い主さんにもその病気のことをよく知って頂ければ,生活面で改善できることが増えますし,そうすれば動物の病気にもプラスになります.それに,もっと言ってしまえば,飼い主さんにかしこくなって頂ければ,それで良い動物病院が見つかるチャンスが増えることにもつながると思うのです.

 ガンだけでなく,腎臓病も心臓病も非常に手強い相手です.
 担当の獣医師に任せているだけでは,勝てる訳がありません.

 ちょっと不謹慎な例で話を続けます.

 私は車に乗ってよく出かけます.埼玉県北部の田舎に住んでいるので,仕方ないことなのですが,私は車の運転があまり好きではありません.車にあまり興味がないからです.

 そんな私でも,車を購入する時は,
 燃費はどのくらい?
 女房も運転しやすいと思うか?
 どのぐらい乗れるか?
 ローンはどうする?
 保険は?
 子ども達がいずれ乗るようになったら…云々

 とかなり遠い先のことを考えて検討します.これは常識ですよね?

 ペットはどうでしょう?
 
 ペットショップで気に入ったから,可愛いと思ったから,子どもにせがまれたから…
 そんな軽い理由(失礼でしたらお詫びします)で,動物を飼い始め,その動物がやがて腎臓病・心臓病・がんと言った,人間で言う成人病を患った時には,「なんで動物病院の診察にはこんなに金がかかるんだ!!」と思う方がいらっしゃるかも知れません.

 ですが,我が国ではペットに医療保険はありませんし(最近はだいぶ民間企業によるペット保険が普及してきましたね),やはり心臓・腎臓という大切な臓器の病気を診察・治療するためには,どうしてもそれなりの費用はかかってしまいます.この点はぜひ皆様にご理解頂きたい大切な点です.

 私は「ペットを飼う時に,ペットが歳をとって重たい病気に罹った時に,それなりのお金がかかることを覚悟しろ」と言っているのではありません.

 「お金がかかることは仕方ない」と納得して,良い治療を受けて頂きたいのです.

 こう書くと,多くの方からいくつかのご意見・ご質問が出ることを私は承知しています.

 第一に,重たい病気に罹って,飼い主が治療費を負担できないのなら,辛いけど安楽死を選ぶというご意見です.

 冒頭で心臓病や腎臓病の診療に長けた獣医師のチェック・ポイントをお示ししましたが,ついでに「最悪の獣医(存在するとは思いたくないのですが)」のチェック・ポイントを一つお示ししましょう.

 それは,飼い主の要求に応じて,即座に安楽死を実施する獣医(あえて獣医師とは書きません.その理由はいずれ書きますね)です.

 治療費に制限があるのなら,動物病院でそう仰って下さい.
 具体的に,月々いくらまでしか支払えないと,仰って良いのです.

 第二に,「お金がかかるのは仕方ないが,できることならお金をかけずに病院で治療を受ける方法はないのか?」というご質問です.

 例えば,ここに2頭のイヌがいて,両方とも腎臓病に罹ってしまったとします.

 片方(仮に大和としましょう)は非常に軽い腎臓病です.
 腎臓病はひどくなると,尿毒症症状と言って頑固な下痢や嘔吐,食欲不振,貧血,体重低下などが見られるのですが,大和は病気が非常に軽いため,見た目には全く腎臓病に見えない段階だとします.
 食事療法とちょっとした薬を飲み,そして定期健診を受ければ,少なくとも2年は良い状態で(つまり,尿毒症症状に苦しまずに)生きられるハズだと担当の獣医師は太鼓判を押しています.

 一方,もう1頭(仮にモモとしましょう)は,重たい腎臓病です.
 尿毒症症状が続いていて,誰の目から見てもモモの状態は良くありません.
 獣医師は最善の治療を実施しても,延命は期待できず,尿毒症症状を少しでも緩和してあげることしかできないと言っています.また,獣医師はざっと見積もって「ももはあと,3ヶ月持つか持たないか」とも言っています.
 人間で言うと,血液透析や腎臓移植に踏み切らなければならないほどひどい状態だということです.

 さて,これから治療を開始して2頭が亡くなるまでの治療費を比べてみましょう.

 常識的には,治療期間が長い大和の方が高いと考えられますね.
 しかし,現実には,短期間と言えどもモモには何種類もの薬が必要で,更に色々な検査を何回もしなければならないので,一概に「大和の方が高い」とは言えないのです.

 動物では調査されていませんが,アメリカで興味深いデータが出ています.

 腎臓病は人間でも患者さんが多く,血液透析をしなければならないほどひどい腎臓病の方がどんどん増えているそうです.

 血液透析が必要なほどひどくなるまで治療を受けなかった患者が,「さぁ,これから死ぬまで血液透析を受ける」ということで,亡くなるまで透析を受けた場合(つまり,モモと同じパターンです),膨大な医療費がかかります.

 反対に,非常に軽い腎臓病の段階から治療を受けると(つまり,大和と同じですね),治療期間は長くなりますが,トータルで見ると医療費は安価になることが判っています.

 最後に,「良い治療が受けられる病院をどうやって見つけるんだ? 同じお金をかけるなら,よい治療を受けたい.だが,その病院をどうやって見るけるんだ?」という問題もありますね.

 前回は前もって,「良い獣医さんの見分け方を書く」というような予告をしながら,あまりハッキリしたことは書きませんでした.

 いや,正確に言うと書けなかったのです.

 その理由は,獣医師の診療範囲は非常に幅広く,様々な能力を要求されるからです.この幅広い能力をちょっとしたチェック・ポイントで見透かすことは不可能だと思うからです.ちょうど,良い人間と悪い人間を見分けるための,簡単なチェック・ポイントなど存在しないとの同じなのかもしれません.

 ですが,このブロクのメイン・テーマである,腎臓病や心臓病の診察に限定すれば,私はちょっとしたチェック・ポイントで良い獣医さんを見つけられると思います.

 まず,腎臓病の診療に長けた先生は;
 1.血液検査と同じかそれ以上に,尿を詳しく検査しようとします
 2.血液検査だけで慢性腎臓病とは診断しません
 3.食事療法の重要性を具体的に説明します
 4.食事以外の生活指導も,季節に応じて丁寧にします
 5.最低でも半年に1回ぐらいは血圧を測ります
 6.診察の都度にお腹を触り,皮膚をつまんだり,口の中や目をチェックします
 7.同じように,診察の都度に飼い主さんに「飲み水の量が増えていないか」,「おしっこの量や回数が増えてないか」を質問します

 それから,心臓病の診察に長けた先生は:
 1.診察の都度に,必ず動物に聴診器をあて,心臓と肺の音をキチンとチェックします
 2.同じく診察の都度に,後ろ足の内側(股の付け根の部分)を触ります
 3.カルテに心臓の雑音の様子や脈拍数を記入します
 4.食事療法の重要性を具体的に説明します(これは腎臓病と同じですね)
 5.食事以外の生活指導も,季節に応じて丁寧にします(これもそうですね)
 6.散歩の時間や仕方についてもアドバイスします
 7.むやみに利尿剤やステロイド剤を処方しません
 8.飲み水の量を制限する(つまり少なくする)よう飼い主さんに指示することは絶対にありません
 9.心臓病がひどくなって,利尿剤を服用せざるを得ない場合には,日頃から十分に水が飲めるよう飼い主さんを指導します

 腎臓病に関しては7つ,心臓病については9つのチェック・ポイントを示しました.
 もし,皆さんが心臓病または腎臓病のペットを飼ってらしていて,ホームドクターがこのポイントの全てに該当するのなら,それは相当優秀な獣医師であり,「どうぞ安心して小さな命を預けて下さい」と私は断言します.

 一つ付け加えますが,上記の点をチェックすれば,なぜ心臓病や腎臓病の診察に長けた獣医さんかどうか判るかは,またいずれゆっくりと説明することにします(そうでないと,話の収拾がつかなくなるので).

 総論的な話はこれくらいにして,次回から本格的に腎臓病の話に入りましょう.

 今までにコメントが一つもつかないので,ちょっと寂しくなってきました...
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イヌやネコが腎臓病や心臓病に罹るようになったのは,つい最近のこと
 本題である病気の話になかなか入らず,申し訳ありません.

 今回は話があちこちに脱線する(これは私の治らないクセだと思って諦めてください)と思いますが,どうぞお付き合い下さい.

 このブログでお話ししようと思っている腎臓病や心臓病(ガンも含まれます)は,「動物が長生きするようになったからこそ増えてしまった病気」という側面があります.

 私は歴史の本を読むのが好きですが,特に昭和に興味があります.昭和という時代は,太平洋戦争の前後でまるで全く違う時代に思えるし,私の両親や私が生まれた時代でもあるからです.

 私たち日本人がペットとしてイヌやネコを飼うようになって,どのくらいの年月が経ったでしょうか?

 おそらく,太平洋戦争が正式に始まる以前は,多少は豊かだったかも知れませんが,ペットはあまり一般的でなかったと思います.
 せいぜい番犬程度で,伝染病の予防法もなく,短命だったと思います.
 ネコが食べるのはキャットフードではなく,ネズミだったと思います(実際に,私が子どもだった頃,ネコが得意げな顔をしてネズミを加えて歩いているのをよく見かけました.最近はこんなことはなくなりましたね).

 戦争が終わり,日本から食品を含む全ての物資がなくなり,日本人は自分自身のその日の生活に追われ,とてもペットを飼う経済的なゆとりも,精神的な余裕もなかったと思います.

 やがて朝鮮半島で戦争が始まると,朝鮮特需とも言われるほどの好景気を日本は迎えます.この時になって,やっと日本人の心身に余裕が出てきたと指摘する方(本)が多いですね.そして,私が生まれる頃,池田首相の「所得倍増計画」が実行に移され,みるみる間に目標が達成され,本当に日本は好景気になります.

 詳しく資料を分析してこのブログを書いているわけでないので,多少,数字に間違いがあるかも知れませんが,日本にドッグフードが入ってきたのはこの頃です.

 私の知り合いに,日本ではじめてとなるドッグフードの輸入・販売に奔走した方がいらっしゃいますが,ドッグフードに対する当時の日本人の反応は極めて冷たかったそうです.

 イヌの餌をわざわざ金を出して買うのか?
 イヌは残飯(人間の食べ残し)で十分

 こんな意見が非常に多かったそうです.

 しかし,昭和40年代の半ばになって,やっとドッグフードの販売数が軌道に乗ったそうです.

 動物が長生きするためには,まず食べ物が重要です.そして,伝染病から身を守るための予防注射も大切です.

 狂犬病以外の伝染病の予防接種がいつから始まり,接種率がどう上昇したのかは調べられませんでしたが,おそらく予防注射は昭和50年代にはいって広く普及したと想像しています.

 つまり,栄養と予防注射という長生きするために最低限必要なアイテムが普及したのは,昭和50年前後ということです.これ以前の動物は,栄養不良や伝染病のために今よりもずっと短命だったと断言できます.

 前置きが長くなりましたが,私が今回,最初に強調したいことは,「少なくとも日本では,イヌやネコが長生きするようになってから,せいぜい20年チョットしか経ってない」ということです.

 つまり,イヌやネコが心臓病・腎臓病・がんと言った病気に罹るようになったのは,20年ぐらい前からということです.

 これが何を示しているかというと,30年前までの獣医師は,このような病気を扱わなかったし(扱う必要がなかった・出会えなかったとも言えますね),そもそもこのような病気はこの世に存在しなかった訳ですから,教科書にすら載っていないという状況だった訳です.

 話題を変えましょう.

 太平洋戦争が終結するまで,日本の獣医学教育は専門学校で2年間行われていました.しかし,あのGHQが「それではダメだ」と判断し,4年制に変更され教育は大学で行われるようになりました.さらに,獣医師に対するニーズが多種多様となり,これを受けて6年制に延長されました.私はこれは誠に正しい措置だと思っています.

 私は6年制教育が始まった4期生です.この当時,私は先進的な獣医学教育を受け,獣医師になったはずです.しかし,そんな私達の世代でさえ,猫の病気はほとんど講義に出てきませんでした.
 私は心臓病が主な専門ですが,私は学生時代,イヌの心臓病としてはフィラリア症しか講義を受けなかった記憶があります.「猫には心臓病はほとんどない」とも教えられました.当時は確かに心臓病にかかる猫は本当に珍しかったのです.

 しかし,今はどうでしょう.

 「猫には心臓病はない」と思っている獣医師は皆無です.この20数年間で猫が長生きするようになり,学問が進歩し,そして獣医師の診療レベルがアップして,猫にも心臓病が発生していることが判明しました.
 
 ここまでお話しすると勘の良い方はお気づきだと思うのですが,学生時代に大学で教わった知識や技術だけでは,動物の病気を診断・治療することができないのです.

 獣医師は定期的に学会や講習会に出かけ,あるいは仲間内で勉強会を作り,新しい情報や技術を仕入れ,そして新しい学術書や文献を読みふけり,必死に勉強しています.その理由は,「動物を苦痛から救い,飼い主さんに満足して頂きたい」と思っているからなのですが,かつて以上に動物が長命になり,今まで存在しなかった病気が発生するようになったこと,そして,様々な動物がペットとして飼育されるようになり,かつての知識では十分に診療できないという実情もあります.

 ですから,私は獣医師たるものは一生涯,勉強に追われる,いや追われるべきだと信じています.

 勉強している獣医師は,自分に対しても他人に対しても謙虚です:飼い主さんや別な病院を罵倒・批判することはありません.
 勉強している獣医師は,難しい話を解りやすくかみ砕いて説明できます:説明できないにしても,必至にかみ砕こうと努力しています.無論,飼い主さんが発する質問には丁寧に答えるはずです.
 勉強している獣医師は,志が「動物を苦痛から救い,飼い主さんに満足して頂くこと」にあります:動物や飼い主さんに不快感を与えないための努力をしています.

 もしご覧の皆様が,人間観察に自信をお持ちなら,以上の点を観察してみるととても参考になると思います.
 このような自信をお持ちでない方の中には,ネットで病院の情報を集め判断する方がいらっしゃいます.

 が,注意してください.

 ネットで誰が発信したのか解らない情報(こう言うのを怪情報と呼びます)に振り回されて,あちこちの病院を転々と渡り歩き,その挙げ句に病気がどんどん悪くなってしまった…という笑えない話は,実はよくある現実なのです.
 その病院に通っている他の飼い主さんから直接,お話しを伺っても良いし,ご自分で一度,その病院に立ち寄って,直接病院の雰囲気を感じ取ると良いと思います.決して,ネットの情報に翻弄されて不幸にならないで頂きたいものです.

 「なんだ,良い獣医さんをみつけるためのチェック・ポイントを書くのかと思った」と落胆されている方がいらっしゃったら,その方に私は次のように質問します.

 「良い結婚相手を見つけるためのチェック・ポイントは何ですか?」と.

 こう聞かれて,「健康で,明るくて,真面目で,年齢は…」となるのでしょうが,どれも表面的なことばかりですよね.該当する方は何万人もいます.

 結婚や恋愛と全く同じで,いくつかのチェック・ポイントを満たせばよい先生などという判断は不可能なのです.

 まずは直接あって,色々と話をする.
 その中で,その先生の人間性や技量が必ず見えるはずです.

 最後は,ちょっと飼い主さんにとって耳の痛いことを書いてしまったかも知れませんね.

 でも,大学病院で診察している獣医師として,一つだけチェック・ポイントをお示ししましょう.

 それは
 ・解らないこと,出来ないことを正直に飼い主さんに伝え,決して嘘をついたり,無理な処置をしない
 ・解らない・出来ないと言うだけでなく,解らない・出来ないから,「こうしましょう」と次の方針をキチンと提案する
 の2点です.

 この2つを実行している先生は,私はホームドクターとして優秀だと思います.

 1つ目の点については,飼い主さんにもっと賢くなって欲しいということです(このことは次回お話ししたいと思います).

 2つ目の点は,例えば「この子の心臓から小さな雑音が出ているように思います.しかし,本当に雑音が出ているかどうか私には正確に判断できません.そこで,心臓病の診療を得意とする先生(大学病院とは限りません)をご紹介したいのですが,いかがでしょうか?」と言ったような対応をされる先生ということです.

 次回は,獣医師として飼い主さんにお願いしたいことを書きたいと思います.
犬と猫の3大死因の共通点
 それぞれの病気の詳しい説明に入る前に,もうちょっと全般的な説明を続けます.

 心臓病,腎臓病,そしてがんはそれぞれ異なる病気です.しかし,いくつかの共通点があります.

 第1に,いずれも慢性疾患だということです.

 「疾患」というのは「病気」と同じ意味ですね.
 「慢性」というのは,「長い時間をかけてゆっくりと進行する性質がある」という意味です.しかし,皆様にはもう一つの重要な意味を知って頂きたいと思います.

 病名に「慢性」の二文字がつく病気は,完治しないのが基本です(がんの中には完治するものがありますが,再発したり転移するタイプもまた多いのが実情です).
 例えば,犬や猫はたびたび膀胱炎という病気にかかります.この病気が短時間で進行すれば私達は急性膀胱炎と診断します.急性の病気は完治が望める病気です.ですから,治療の目標は病気を完治させることです.

 これに対して,慢性膀胱炎は完全な治癒(完治)は望めません.そのため,症状の緩和や病気がそれ以上悪くならないようにすることが治療の目的になります.つまり,心臓病,腎臓病.がんに罹った犬や猫は,その病気と長い間,戦うことになります.

  「長い間,戦うことになります」….言葉で言うのは簡単です.長い間,動物病院に通えばそれなりの費用もかかります.しかし,治療が成功すれば病気の進行は遅くなり,動物は苦痛から解放されます.動物が苦しまなければ,飼い主さんも明るい気持ちを取り戻すことが出来ます.いずれにしても,長い治療期間を通じて,飼い主さん達はたとえ担当の獣医師から様々な説明を受けたとしても,色んな疑問がわいたり,様々なことに不安感を感じられるのが普通です.そんな疑問点を網羅して,できるだけ判りやすくお答えしようと言うのがこのブログの目的です.

 「長い間,ペットの病気と戦う」…この戦いに疲れ果ててしまう方がいらっしゃるかも知れません.その挙げ句に「もうペットは飼わない」と仰る方がいらっしゃるかも知れません.私もこのようなことを何回となく飼い主さんから言われたことがあります.
 私は,動物をどうしても好きになれない人間がいることを知っています.同時に,動物と暮らすことで幸せになる人間がいることも知っています.私のような動物医療に携わる獣医師がサポートできるのは,主に後者の方々です.

 「もうペットは飼わない」と言われてしまうと,私は何とも言えない気持ちになります.ですから,そのような飼い主さんをお一人でも少なくしたいと思ってます.

 この3つの疾患の第2の共通点は,治療する上で生活管理が非常に重要だということです.

 私は大学の附属病院で診察しているため,急性の病気よりも慢性の病気にかかった動物を多く拝見しています.
 飼い主さんに病名を告げ,今後の見通しや生活指導をご説明し,最後に「何かご質問はございますか?」とお聞きすると,多くの飼い主さんが「日常生活で気をつける点を教えて下さい」とか,あるいは「食べ物や散歩にはどのような点を注意したら良いですか」とお尋ねになります.これはどちらも非常に的確なご質問です.

 いずれ詳しく説明しますが,例えば慢性心臓病に罹った犬や猫では,食事に十分に注意する必要があります.特に塩分(正確にはナトリウム)は要注意です.また,栄養価の高いものばかり食べて肥満になるのも要注意です.
 慢性腎臓病に罹ってしまった場合,日頃から水を沢山飲めるようにしてあげるべきです.食事(敢えて“餌”とは書きません.この理由はいずれ言及します)に関しては,蛋白質を制限します.
 炭水化物はがんを転移させやすくすることが判っているため,がんに罹った動物はできるだけ炭水化物を食べないようにすべきです.

 食物は決して薬ではありません.

 しかし,慢性的な病気では,成分を病気に応じて変えた食物は,薬と同じかそれ以上に有効なことが犬や猫でも判っているのです.このことも,いずれ具体的に説明する予定です.

 第3の共通点は,既に述べたことですが,病状はゆっくりと進行(つまり悪化)するということです.
 治療を受けた場合よりも,治療を受けた方が病状の進行は無論,遅くなります.しかし,治療を受けたとしても,病気の進行を完全にストップさせることは多くの場合で不可能です.どうしても,進行してしまうのです.

 このことは,慢性疾患では通院期間が長くなることを示します.

 通院期間が長くなると言うことは,それだけお金も労力かかります.普通,お金も労力もかかる場合,十分に納得してから判断したいですよね?

 しかし,私から見ると日本人は特にお金の話題を避けるクセ(これは良いことでもあるのでしょうが)があるようです.

 でも,動物の命も大切ですが,お金も大切ですよね.

 十分に納得して治療を受けて頂くために,病状は当然のこととして,治療費についてもよく説明を受ける権利が飼い主さんにあると言うことです.

 良い獣医さんの見つけ方にはいくつかポイントがあると思います.その一つが「治療費について,気軽に相談・質問できる先生」だと思います.話が脱線しますが,次回は良い獣医さんの見つけ方,そして飼い主さんにお願いしたいことを書く予定です.
このブログをはじめたワケ
  このブログ(私はブログをやるのは初めてです)では,もしも皆さんが可愛がってらっしゃる犬や猫が,動物病院で「心臓病または腎臓病」と診断された時に,あるいはされる前に,飼い主さんとしてぜひ知っておいて頂きたい情報を盛り込みたいと思っています.

 ご存じのように,犬や猫はこの2つの病気以外にも,例えば湿疹,胃腸炎,肝機能障害,伝染病など様々な病気に罹ります.
 ですが,このブログではこのような病気は一切取り上げず,敢えて心臓病と腎臓病に限定して詳しく(そして判りやすく)解説しようと思っています.

 まず最初に,どうして私がこの2つの病気に限定したのかを是非ご理解頂きたいと思います.

犬猫の3大死因

 私達を含め命あるものは,最後は必ず死を迎えます.
 私達日本人が長寿になったことは非常に喜ばしいことですが,それでも死は避けられません.
 そして,がん,心臓病,脳血管系の疾患が私達の3大死因となっているのはよく知られた事実です.したがって,私達はそれなりの年齢に達すると,どうしてもこれらの3つの病気を意識するようになり,日頃から予防を心がけたり,健康診断を受けるようになる訳です.
 実は犬や猫にも3大死因と呼ばれる病気があります.それが心臓病,腎臓病,そしてがんなのです.
 皆様が可愛がってらっしゃる犬や猫がやがて死を迎える時,この3つの病気のどれかにかかって亡くなる確率が高い,と言い換えても良いと思います.
 私は獣医師ですが,がんについはあまり専門的に勉強していません.しかし,心臓と腎臓については必死に勉強してきたつもりです.これが2つに絞った理由です.

 実を言うと,私は飼い主さんに向けて,犬や猫の腎臓病や心臓病に関する情報を提供するための判りやすい単行本を書きたいと思っていました.
 しかし,私は他のオジサン・お父さんと同様,時間に追われており,頭では「少しずつ原稿を書こう」と思っていても,ついつい後回しになってしまい,遅々として執筆は捗りませんでした.
 しかし,どうしても上記の情報は獣医師としてキチンと提供しておきたい…執筆のモチベーションを維持するための良策は? と考えた挙げ句に出てきたのがブログです.

 私がこれから書きつづることが受け入れられれば,きっと何らかのコメント(批判,意見,質問)が入るかもしれない.それが,執筆を続ける強い動機になって,怠け者の私も流石にモチベーションを維持できるだろう.そう考えました.

 今回は,私が犬猫の腎臓病と心臓病に関するキチンとした情報を飼い主さんに提供したいと思った理由を述べて終わりです.次回は(いつになるか判りませんが),上記の3大疾患の共通点についてお話しします.
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