獣医さんから「あなたのペット(犬猫)は腎臓病・心臓病です」と言われたら
獣医さんから「あなたのペット(犬猫)は腎臓病・心臓病です」と言われた時のご参考になるブログにしたいと思ってます.私は現役の獣医師で,特に心臓病と腎臓病を得意分野にしています.
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イヌやネコが腎臓病や心臓病に罹るようになったのは,つい最近のこと
 本題である病気の話になかなか入らず,申し訳ありません.

 今回は話があちこちに脱線する(これは私の治らないクセだと思って諦めてください)と思いますが,どうぞお付き合い下さい.

 このブログでお話ししようと思っている腎臓病や心臓病(ガンも含まれます)は,「動物が長生きするようになったからこそ増えてしまった病気」という側面があります.

 私は歴史の本を読むのが好きですが,特に昭和に興味があります.昭和という時代は,太平洋戦争の前後でまるで全く違う時代に思えるし,私の両親や私が生まれた時代でもあるからです.

 私たち日本人がペットとしてイヌやネコを飼うようになって,どのくらいの年月が経ったでしょうか?

 おそらく,太平洋戦争が正式に始まる以前は,多少は豊かだったかも知れませんが,ペットはあまり一般的でなかったと思います.
 せいぜい番犬程度で,伝染病の予防法もなく,短命だったと思います.
 ネコが食べるのはキャットフードではなく,ネズミだったと思います(実際に,私が子どもだった頃,ネコが得意げな顔をしてネズミを加えて歩いているのをよく見かけました.最近はこんなことはなくなりましたね).

 戦争が終わり,日本から食品を含む全ての物資がなくなり,日本人は自分自身のその日の生活に追われ,とてもペットを飼う経済的なゆとりも,精神的な余裕もなかったと思います.

 やがて朝鮮半島で戦争が始まると,朝鮮特需とも言われるほどの好景気を日本は迎えます.この時になって,やっと日本人の心身に余裕が出てきたと指摘する方(本)が多いですね.そして,私が生まれる頃,池田首相の「所得倍増計画」が実行に移され,みるみる間に目標が達成され,本当に日本は好景気になります.

 詳しく資料を分析してこのブログを書いているわけでないので,多少,数字に間違いがあるかも知れませんが,日本にドッグフードが入ってきたのはこの頃です.

 私の知り合いに,日本ではじめてとなるドッグフードの輸入・販売に奔走した方がいらっしゃいますが,ドッグフードに対する当時の日本人の反応は極めて冷たかったそうです.

 イヌの餌をわざわざ金を出して買うのか?
 イヌは残飯(人間の食べ残し)で十分

 こんな意見が非常に多かったそうです.

 しかし,昭和40年代の半ばになって,やっとドッグフードの販売数が軌道に乗ったそうです.

 動物が長生きするためには,まず食べ物が重要です.そして,伝染病から身を守るための予防注射も大切です.

 狂犬病以外の伝染病の予防接種がいつから始まり,接種率がどう上昇したのかは調べられませんでしたが,おそらく予防注射は昭和50年代にはいって広く普及したと想像しています.

 つまり,栄養と予防注射という長生きするために最低限必要なアイテムが普及したのは,昭和50年前後ということです.これ以前の動物は,栄養不良や伝染病のために今よりもずっと短命だったと断言できます.

 前置きが長くなりましたが,私が今回,最初に強調したいことは,「少なくとも日本では,イヌやネコが長生きするようになってから,せいぜい20年チョットしか経ってない」ということです.

 つまり,イヌやネコが心臓病・腎臓病・がんと言った病気に罹るようになったのは,20年ぐらい前からということです.

 これが何を示しているかというと,30年前までの獣医師は,このような病気を扱わなかったし(扱う必要がなかった・出会えなかったとも言えますね),そもそもこのような病気はこの世に存在しなかった訳ですから,教科書にすら載っていないという状況だった訳です.

 話題を変えましょう.

 太平洋戦争が終結するまで,日本の獣医学教育は専門学校で2年間行われていました.しかし,あのGHQが「それではダメだ」と判断し,4年制に変更され教育は大学で行われるようになりました.さらに,獣医師に対するニーズが多種多様となり,これを受けて6年制に延長されました.私はこれは誠に正しい措置だと思っています.

 私は6年制教育が始まった4期生です.この当時,私は先進的な獣医学教育を受け,獣医師になったはずです.しかし,そんな私達の世代でさえ,猫の病気はほとんど講義に出てきませんでした.
 私は心臓病が主な専門ですが,私は学生時代,イヌの心臓病としてはフィラリア症しか講義を受けなかった記憶があります.「猫には心臓病はほとんどない」とも教えられました.当時は確かに心臓病にかかる猫は本当に珍しかったのです.

 しかし,今はどうでしょう.

 「猫には心臓病はない」と思っている獣医師は皆無です.この20数年間で猫が長生きするようになり,学問が進歩し,そして獣医師の診療レベルがアップして,猫にも心臓病が発生していることが判明しました.
 
 ここまでお話しすると勘の良い方はお気づきだと思うのですが,学生時代に大学で教わった知識や技術だけでは,動物の病気を診断・治療することができないのです.

 獣医師は定期的に学会や講習会に出かけ,あるいは仲間内で勉強会を作り,新しい情報や技術を仕入れ,そして新しい学術書や文献を読みふけり,必死に勉強しています.その理由は,「動物を苦痛から救い,飼い主さんに満足して頂きたい」と思っているからなのですが,かつて以上に動物が長命になり,今まで存在しなかった病気が発生するようになったこと,そして,様々な動物がペットとして飼育されるようになり,かつての知識では十分に診療できないという実情もあります.

 ですから,私は獣医師たるものは一生涯,勉強に追われる,いや追われるべきだと信じています.

 勉強している獣医師は,自分に対しても他人に対しても謙虚です:飼い主さんや別な病院を罵倒・批判することはありません.
 勉強している獣医師は,難しい話を解りやすくかみ砕いて説明できます:説明できないにしても,必至にかみ砕こうと努力しています.無論,飼い主さんが発する質問には丁寧に答えるはずです.
 勉強している獣医師は,志が「動物を苦痛から救い,飼い主さんに満足して頂くこと」にあります:動物や飼い主さんに不快感を与えないための努力をしています.

 もしご覧の皆様が,人間観察に自信をお持ちなら,以上の点を観察してみるととても参考になると思います.
 このような自信をお持ちでない方の中には,ネットで病院の情報を集め判断する方がいらっしゃいます.

 が,注意してください.

 ネットで誰が発信したのか解らない情報(こう言うのを怪情報と呼びます)に振り回されて,あちこちの病院を転々と渡り歩き,その挙げ句に病気がどんどん悪くなってしまった…という笑えない話は,実はよくある現実なのです.
 その病院に通っている他の飼い主さんから直接,お話しを伺っても良いし,ご自分で一度,その病院に立ち寄って,直接病院の雰囲気を感じ取ると良いと思います.決して,ネットの情報に翻弄されて不幸にならないで頂きたいものです.

 「なんだ,良い獣医さんをみつけるためのチェック・ポイントを書くのかと思った」と落胆されている方がいらっしゃったら,その方に私は次のように質問します.

 「良い結婚相手を見つけるためのチェック・ポイントは何ですか?」と.

 こう聞かれて,「健康で,明るくて,真面目で,年齢は…」となるのでしょうが,どれも表面的なことばかりですよね.該当する方は何万人もいます.

 結婚や恋愛と全く同じで,いくつかのチェック・ポイントを満たせばよい先生などという判断は不可能なのです.

 まずは直接あって,色々と話をする.
 その中で,その先生の人間性や技量が必ず見えるはずです.

 最後は,ちょっと飼い主さんにとって耳の痛いことを書いてしまったかも知れませんね.

 でも,大学病院で診察している獣医師として,一つだけチェック・ポイントをお示ししましょう.

 それは
 ・解らないこと,出来ないことを正直に飼い主さんに伝え,決して嘘をついたり,無理な処置をしない
 ・解らない・出来ないと言うだけでなく,解らない・出来ないから,「こうしましょう」と次の方針をキチンと提案する
 の2点です.

 この2つを実行している先生は,私はホームドクターとして優秀だと思います.

 1つ目の点については,飼い主さんにもっと賢くなって欲しいということです(このことは次回お話ししたいと思います).

 2つ目の点は,例えば「この子の心臓から小さな雑音が出ているように思います.しかし,本当に雑音が出ているかどうか私には正確に判断できません.そこで,心臓病の診療を得意とする先生(大学病院とは限りません)をご紹介したいのですが,いかがでしょうか?」と言ったような対応をされる先生ということです.

 次回は,獣医師として飼い主さんにお願いしたいことを書きたいと思います.
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コメント
この記事へのコメント
老若の獣医の差
A大学のヤナギと申します。
僭越ながらコメントを書かせていただきます。
>学生時代に大学で教わった知識や技術だけでは,動物の病気を診断・治療することができないのです.

街の動物病院に実習に行くと、病院によって診断法、治療方、技術に異常なくらいばらつきがあることに驚くことがあります。方法の違い、というよりも古い(エビデンスの乏しい、経験重視)やり方vs新しい(理論的、エビデンスのある)やり方が違いを生んでいる気がします。
経験も重要ですが、経験だけでは心臓病や腎臓病のような新しい疾患に立ち向かうには限界がある気がしました。新しい病気に対して貪欲に情報がほしいです。学生にも。
2008/01/27(日) 00:25:47 | URL | ヤナギ #-[ 編集]
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2012/04/28(土) 18:44:29 | | #[ 編集]
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このコメントは管理者の承認待ちです
2013/01/29(火) 21:28:57 | | #[ 編集]
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2013/08/17(土) 20:57:45 | | #[ 編集]
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