獣医さんから「あなたのペット(犬猫)は腎臓病・心臓病です」と言われたら
獣医さんから「あなたのペット(犬猫)は腎臓病・心臓病です」と言われた時のご参考になるブログにしたいと思ってます.私は現役の獣医師で,特に心臓病と腎臓病を得意分野にしています.
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腎臓(じんぞう)ってなんだ!?
 心臓病と腎臓病のどちらを先に解説するか,ちょっと悩みましたが,腎臓病を先に扱うことにしました.その理由は,ちょうど今の時期,腎臓病が悪化してしまう動物が多いからです(この理由はいずれキチンと説明しますね).

 今までと違って,これからは私が講義や講演会で使っているスライド画像なども織り交ぜながらお話しを進めようと思っています.

 腎臓(じんぞう)という言葉を聞いて,皆さんは最初に何を連想しますか?

 お酒が好きな私は,腎臓というと直ぐに「マメ」という言葉を思い出します.「マメ」というのは,関東地方のモツ焼き屋さんでは「腎臓」のことです.塩焼きにして食べると美味しいんですよ.

 ところで,腎臓のことを「マメ」というと,なんだか「小さくて,大したことがない臓器」というイメージを持つかも知れませんが,そんなことはありません.

 我々人間を含め,動物の体内には偉大で,働き者の臓器が沢山ありますが,腎臓はそんな臓器の一つなのです.

 腎臓の偉大さをご理解頂くために,まずは腎臓の構造を知ることにしましょう.

 最初に,この写真をご覧下さい.これは猫のお腹の撮影したレントゲン写真です.
猫の腹部レントゲン写真(側面像)


 レントゲン写真だからと言って,「私には判らない」と尻込みしないで下さい.実は理屈はとても簡単なのです.

 大まかに言うと,レントゲン写真では,白く写るものと黒く写るものがあります.

 骨のような硬いもの(骨以外に,コインや金属があります),それから水はレントゲンでは白く写ります.
 空気,筋肉,脂肪などは黒く写ります.

 これは,今後のこのブログ中で重要なことになるので,是非頭に入れておいてください(同時に,私は飼い主としてこれぐらいのことを知っておいて欲しいと思っています)

 …話が脱線するのは,私の治らない病気だと思って下さいね.でも,この病気はそれほどひどくないようです.なぜなら,私はキチンと話を元に戻せるからです!!

 これは,猫のお腹を横から見た写真ですが,これでは腎臓がどこにあるかなんて判りませんね.

 矢印で囲んだこの部分が腎臓です.うっすらと白い卵みたいな影が見えますね.横から見ると,右と左の腎臓が重なって写ります.でも,よく見ると,卵形の影が2つ重なっているのが解るはずです.

猫の腹部レントゲン写真(側面像:腎臓)

 
 腎臓の影は,一番後ろの肋骨のあたりの背中側にあります.腎臓はお腹の中にある臓器ですが,さらに詳しく言えば,お腹の中でも前(頭)の側にある臓器です.

 今度は,猫のお腹をお腹側から撮影したレントゲン写真をお見せしましょう.

猫の腹部レントゲン写真(背腹像)



 矢印で囲んだ部分が腎臓です.私たち人間と同様,動物の腎臓も左右2つあることが判ります.大まかには,腎臓は一番後ろの肋骨の背中側にあります.

猫の腹部レントゲン写真(背腹像:腎臓)



 ここでまた話を脱線させます.
 腎臓に結石ができたり,炎症を起こすと,動物は腎臓に痛みを感じるようになります. もし,皆さんのペットがこの場所を触ると嫌がるようであれば,ある種の腎臓病の疑いがあります.直ぐに動物病院に行って尿の検査を受けることを強くお勧めします.

 さて,話を元に戻します.
 腎臓は血管が豊富で,大量の血液が流れ込んでいます.腎臓は血液という液体を豊富に含む臓器なので,白っぽく見えます.実際にレントゲン写真では矢印で囲んだ腎臓が白っぽく見えますね.

 ここで,不思議に思いませんか?
 なぜ,腎臓は大量の血液を含んでいるのでしょう??

 猫にはとても迷惑な話ですが,今度は実物の腎臓を見てみましょう.

 腎臓外貌


 この写真が猫の腎臓です(とある手術中にこの写真を撮りました.モデルになってくれた,ミーちゃんに感謝しましょう).

 写真の中央に見える卵形の臓器が腎臓です(2つある腎臓のうち,写真には左側の腎臓1つしか写っていません).

 この腎臓には,どす黒い色をした管が上からつながっていますが,これは血管です.心臓から大動脈という非常に太い血管が出ていて,これが胸の中,そしてお腹の中を通り,腎臓のあたりで枝分かれして,腎臓に流れ込んでいます.専門的には,この腎臓に流れ込む血管を腎動脈と言います.非常に太い血管ですね.

 腎臓に流れ込む血管が非常に太いということは,腎臓に大量の血液を送り込んでいるという良い証拠です.だから,レントゲン写真では腎臓は白く写る訳です.

 下のイラストをご覧下さい.

心拍出量と腎血流量


 体重が10kgの健康な犬の心臓は,1分間に全身に約1リットルの血液を送り出しています.ちなみに,我々人間では約5リットルと言われています.
 心臓が送り出した血液は,脳にも皮膚にも脂肪にも腸にも筋肉にも,とにかくありとあらゆる臓器に配られます.
 ところが,血液は全ての臓器に平等に配られる訳ではありません.脳に配られる血液は5%以下と言われています.が,なんと腎臓には約20%の血液が供給されています.これって,不公平ですよね? 動物の血液供給には民主主義はあり得ないようです.

 腎臓は,血液を濾過し,体内で不要になった老廃物をこし取り,尿を作る臓器です.腎臓に言わせれば,血液は尿の原料のようなものです.ですから,腎臓に常時大量の血液が流れ込んでくれないと,腎臓は尿を作ることができません.ですから,腎臓は脳よりも大量の血液を受け取らなければならない訳です

 この事実から,大切なことをいくつか学び取って頂きたいと思います.

 まず,腎臓の働きは心臓の機能に大きく影響されるということです.
 腎臓は,心臓というポンプが汲み出した血液を受け取ることで,はじめて尿を作ることができます.ですから,心臓の機能や血圧が正常でないと,腎臓が受け取る血液の量に支障が出てきます.「腎臓病」というと,「腎臓そのものの病気」と思いがちですが,実は,腎臓自体は正常でも,心臓に問題があれば,腎臓の機能は低下する恐れがあるのです.

 次に,腎臓は常時,大量の血液と接触しているということです.
 血液に毒素が入り込むと,この毒素は全身を巡るわけですが,特に腎臓が毒素のダメージを受けやすいということです.

 いくつか具体例をお示ししましょう.
 我々人間がよくかかる病気の一つに糖尿病があります.血糖値が上昇することで,全身に色々な問題を引き起こす厄介な病気ですね.この糖尿病は,人間ほど発生率は高くありませんが,犬や猫も襲います.適正な治療を受けないと,糖尿病の犬や猫は,腎不全になって死亡します.実を言うと,糖尿病の人間も最後は腎不全が原因で亡くなる方が少なくないのです.

 糖尿病になって,血糖値が上がると,なぜ腎臓が悪くなるのでしょうか?

 それは,血液中に糖(正確にはぶどう糖とかグルコースと呼びます)が大量に存在すると,それは血管にとっては猛毒になるからです.血糖値が高い状態が長く続くと,腎臓の血管も目の網膜(視覚を司る大切な膜で,目の奥にあります)の血管も,そして脳の血管も全部痛んでしまうのです.

 もう一つ,触れておきたいのはブドウです.

 一昨年あたりから,アメリカでブドウやレーズンを摂取した犬が,その直後に突然,体調を崩し死亡するという事例が相次いで報告されました.直接的な死因は,急性腎不全でした.血液透析まで受けたにも関わらず,死亡した例も報告されています.
 このような事例は犬でのみ報告されていて,猫や他の動物では報告がありません.ブドウに含まれる何らかの物質が血液に入り込み,犬の腎臓を痛めつけていると言うところまでは判っていますが,具体的にブドウに含まれる何という物質が真犯人かまでは判っていません.
 過去の報告をまとめると,急性腎不全を発病する最低摂取量はぶどうであれば19.85g/kg,レーズンとして3.11g/kgと言われています(単位に気をつけて下さい.これは動物の体重1キロあたりの摂取量をグラムで表示しています.3キロのイヌであれば,約60gのブドウで腎不全になる可能性が高いということです.
 この話を幾人かの方にしてきましたが,時おり「では,何グラムまでなら安全なのか?」と質問されることがあります.

 基本的に,イヌではブドウが有毒なことが最近になって解りました.そして,過去の発病例を見ると,最も摂取量が少ないイヌで,体重1キロあたり約20gのぶどうだということが解りました.もしかしたら,これよりも少ない摂取量で死亡するイヌもいるかも知れません.ですから,イヌにはブドウを決して与えないで頂きたいのです.何グラムまでだったら安全なのかというデータはありません(実験で確認するためには,多くの犬に犠牲を強いるため,私はこのような実験は人道的に問題があると思います).

 このように申し上げているのに,「では,何グラムまでは大丈夫なのか?」と質問される方の心境が解りません.
 犬はぶどうやレーズンを食べなくても,健康を維持できます.ぶどうを食べなくても全く問題ないのです.それなのに,なぜぶどうやレーズンを与え続けようとするのでしょうか? 私にはよく理解できません.

 話がまた脱線してしまいましたが,次回は腎臓に流れ込んだ血液がどうなって行くか,腎臓の構造と関連づけながら説明を進めたいと思います.
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コメント
この記事へのコメント
いつも先生から診察の折に、腎臓病のお話を伺っていますが、
ブログの記事を読んで、毎回、なるほどと思ってしまいます。
今回は画像添付でよりわかりやすいです。
これからも、先生のブログで知識を深めたいと思います。

2008/02/21(木) 23:39:22 | URL | エバーかあさん #-[ 編集]
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2008/02/24(日) 12:25:48 | | #[ 編集]
はじめて見にきました。ぶどうのお話はとてもわかりやすく、「何gなら大丈夫?」に対してのお考えもとても共感しました。
私ももっと勉強したいとおもいます。
また見に来ます。
2008/03/27(木) 21:12:36 | URL | みくにゃんずまま #-[ 編集]
先日、まだ年若い愛犬を腎性急性腎不全から慢性化させてしまった者です。
早期の段階から、情報を得るべく、犬の腎不全に関して調べていましたが、情報が少なく、人間用の論文や専門書を読みあさっていました。
が、ココにこんなに分かりやすいサイトがあったとは!
犬の腎臓に対して知識を深めるお話をありがとうございます。
次の記事を楽しみにしています。
今、愛犬はドクターや家族と相談し、腎移植をするか相談中です…

余談ですが、ぶどうは「コルヒチン」が原因では?と聞いたことがありましたが、どうなんでしょうか?
2008/06/11(水) 07:03:46 | URL | 腎臓マニア #mQop/nM.[ 編集]
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2008/06/16(月) 02:01:28 | | #[ 編集]
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2008/11/10(月) 14:39:52 | | #[ 編集]
面白かったです
ちょくちょく見ています。継続して更新凄いですね。僕も努力しないと・・・。もう寒いので風邪などに気をつけて下さい。またよらせて頂きます。
2008/11/11(火) 00:32:31 | URL | 暁生 #-[ 編集]
我が家のネコ(8歳)もBUNの値が通常より高く、1年前から処方食に切り替えました。 先生の話はとても分かりやすく勉強になります。 更新されるのを楽しみにしています。
2009/06/24(水) 16:47:34 | URL | mari #-[ 編集]
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2012/04/07(土) 07:52:49 | | #[ 編集]
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2012/09/16(日) 16:36:08 | | #[ 編集]
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